【年収90万円でハッピーライフ】自分のものさしで一つ一つ測ってみる【書評】
「年収90万でハッピーライフ」
なんて素敵なタイトルなんだろう。
本屋さんで表紙を見つけたとき、そう思いました。
表紙のイラストも相まって「そんなに一生懸命生きなくても大丈夫だよ、気ままに行こう」みたいな雰囲気がバシバシ伝わってきて、思わず手に取りました。
一周読んだ感想は、「自分のものさしをしっかり持って、面倒くさがらず一つ一つ測ってみよう」といった印象でした。のんびり、マイペース、気楽に、でも行動はしたほうが良いよ、的な。
働くのに嫌気が差し、なんのプランもなく仕事を辞めた身としては大事にしたい「人生に対するマインド」を学べました。
忙しい日常を変えたい、一度立ち止まりたい、けど立ち止まり方がわからない。
そんな現状に効く指南書です。
目次
大事なのは、嫌いなことで死なないこと
進学、就職。
人生においてかなり重要な決断を迫られる場面です。
今まで好きなように生きてこられたのに、急に周りと競争させられる。
そんな鬼気迫る状況に、理不尽ともいえる強引さで巻き込まれるイベントですが、作者さんに言わせれば
進学とか就職とか、せなあかんことないですよ、ぜーんぜん。…やりたい仕事なんて探したらあかん。そんな高いとこに目標設定したら自分がしんどすぎる。仕事に求めるのは、出来ないことをしない、というくらいでいい。
(本文抜粋)
もちろん、頑張った結果好きな仕事に就ける、やりたかった勉強ができる、そういった志を持った上での成功体験にはとても価値があると思います。
しかし、嫌いなことをムリにやってまで周りと同じでなければならないのかというと、決してそんなことはありません。
好きな仕事、やりたいことを一生懸命探すよりも、嫌いなことをやらない方向で将来を考えてみる。
積極的な生き方ばかり称賛される昨今こそ、こんな考え方を取り入れてみると思わぬ発見があるかもしれません。
「ベストな生き方」の見つけ方
インターネットの拡まり、感染症の流行。
社会が目まぐるしく変化していく中で、働き方やライフスタイルが見直されています。
そのような中、取り沙汰されるのは「成功」とか「自分らしさ」。
けれど、多様な選択肢の中でこれらを探すのって目が回る作業ですよね。
とりあえず「成功者」と言われるような人たちの意見に流されてみるも、どれも心からピンとくるものがない。
そんなときに効く言葉がこちら。
外側に開拓していくのではなくて、内側に進んでいくのが意外と根本的な解決の糸口になります。自分が本当は何が好きなのか、どういう暮らしを幸せと思えるのか。…イヤになるほど(自分と)向き合って自分を掘り下げていくんです。
…何がベストかっていう考え方からも、できるだけ離れていったほうがラクです。がむしゃらに働こうが、ゆっくり生きようが、その人が好きでそういう生き方をしているなら、ライフスタイルに優劣とか特にないと思うし。(本文抜粋)
それがベストかどうかなんて、周りに説明しなきゃいけないものでもありません。
「生き方」というのはこれまで自身がしてきた選択を積み上げてきたものですから。
そもそも人生における「成功」は周囲からの評価であって、自分からはあまり言いません。
「自分らしさ」だって、他人が知っているわけありませんよね。
周囲の評価軸ではなく、自分の評価軸を使って考える。
多様な選択肢に触れられる昨今だからこそ、心得ておきたいマインドです。
「夢」や「目標」と向き合うのに疲れたら
人と話すとき、必ず出てくる話題が「将来どうするの?」です。
そこではっきり答えられるか否かで自分への印象がガラリと変わる…なんてことはありませんが、私にとってこれはかなり重圧のかかる質問でした。
学校教育でもそうですが、「夢」や「目標」を持っているのが正しい、みたいな風潮ありませんか?
未来への予測が立てづらく、働き方の多様化しているこの時代に同じような思いを抱える人も多いと思います。
それに対し、著者様はこのように考えています。
30年生きてみてわかったことは、人間が頭で思いつくことなんて、結局はたいしたことないってことなんです。未来なんてイヤでもやってきちゃうんだから、目標とか立てずに適度にほっとくっていうのも、ひとつの手じゃないかなあ。
…興味のあることをいろいろやってみて、万が一結果がついてきてなくても、あのとき自分のしたいことができた、って言いうだけで、今日も元気だご飯がウマい!
この考え、実は古代中国で栄えた「諸子百家」という思想のひとつ、老荘思想の中にも出てきます。
老荘思想では、水のように柔軟に生きることを推奨しています。
川は地形に応じて形を変えながら、下へ下へと流れていきますよね。
それと同様に、柔軟に変化しながら時代の流れに任せて放っておく、というのもひとつの解決策なのかもしれません。
ちなみに私の目標は「明日の自分に幻滅されないこと」です。
老荘思想について詳しく知りたい方は、こちらの動画もオススメ⬇
おわりに
いかがでしたでしょうか。
この本は著者様の隠居生活を通して書かれたものです。
隠居生活というのは、いわば社会における地位を放棄するような生活。
このような選択に、不安を覚えるような人や嫌悪感を抱く方もいらっしゃると思います。
ただ一方で、そういった社会における地位を探求しすぎて疲れてしまった、という方もいらっしゃると思います。
この本は、そういった人生一休み中といった方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
私自身、周りにおいていかれないことや将来のリスクばかり考えて生きてきたなと気付かされました。
普段気になって仕方がなかったことも、手放すことでかわりの大切なことに気づけるかもしれません。